ゴム焼き

なんの取り柄もない20歳大学生です

廃墟ラブ

うへー。久しぶりにブログ開いて夏の下書きが見つかったので載せる。八月のおはなし。懐かしいな。こんな気持ちだったんだ。



一昨日廃墟に行った。

ついこの前廃墟になったばかりの廃校である。

バイトの先輩と朝まで飲んでおり、送ってもらっていた道すがら、ふらふらのテンションで近所の廃校に通りかかった。詳細は伏せておく。

 

「ここ、最近廃墟になったんですよ。」

 

「廃墟かー。行ってみたいなー。」

 

「私よく行くんです、好きで」

 

「ふーん。俺も計画してたんだけどなかなか行けなくてさ。」

 

「すきなんですか?」

 

「うん、いいよね。行ってみたい」

 

「じゃあ行きましょうよ」

 

「…え?行きたかったの?」

 

「…はい」

 

てな感じで、軽〜い会話の後、ふわっと、なんとなく忍び込んだ。「いきたかったの」ときかれて「はい」と答えてはみたが、別にどうしても行きたかった訳ではないし、なんなら彼氏と行く約束をしていた。「夏がそうさせた」とはこのことかも知れないな、なんて考えていた。

 

先輩は小さくて身軽で、カエルみたいにぽんっと柵を乗り越えた。私も後に続いて、そろそろと柵を越えた。

 

時刻は午前4時だった。夏の夜の空気が後を引いて、充満している。すこしじっとりして、すこしあつい。見渡す限りの校舎と、ムシムシした空気と、残ったおさけが混ざって、普段よりちょっぴしズレたような感覚になる。私はのんきに、パラレルワールドってこんな感じかなとくるくる回った。

 

二人でいろんな扉を開けようと試みるけれど、ほとんど鍵がかかっていて開かない。まあそうだよね〜なんて言って笑いながら帰ろうとしたとき、「プール」と書かれた看板が目に入った。

 

「プールだって」

 

「ほ〜…」

 

半ば諦めつつ、いちるの望みをかけてドアノブに手をかける。二人とも、まあ開かねえだろ、と踏んでいた。ドアノブが回る。

 

意外な手応えがあった。

 

なんと、ドアは開いたのだ。

 

あんまりにもビックリして、それまで滑らかに進んでいた動作が止まる。

 

「えー!」

 

「開いた笑」

 

興奮で先輩にもタメ語になりながら、嬉しくてズンズン進む。

もう1つの扉も難なく開いた。

 

そこは他でもなく、プールだった。小学校のころ、夏に使っていた25メートルプールだ。まだ水が真ん中の方に泥のようになって残っており、乾いたところには、塩素の塊なのか紙のようなゴミがたくさん床にへばりついていた。すこし古めかしいそれは、まさに廃墟としてふさわしかった。私は廃墟がやっぱり好きだ、と改めて思った。

 そこからは写真撮影会が始まった。非日常感からヘンテコなポーズをして写真を撮りまくる。私は自分の殻を破るのが苦手なので無難なポーズばかりだったけど、先輩はなかなかアクロバティックだった。プールサイドを走り抜けたり、プールに飛び込むフォームをしたり、カラカラのプールの中でカバンを投げたり、、楽しそうだったし、私も楽しかった。すこしだけ、恋人のようだった。すこしだけ、浮気の気分だった。全くそんなつもりは無かったはずなんだけど。

 

しばらく写真を撮りまくって、存分に遊んで、私たちは外に出た。プールの中は暑くてちょっぴり変なにおいがしたけど、そとは清々しい。夜の空気はの残り香は消え去り、朝の爽やかな空気が辺りを通り抜ける。。もう一度柵を越えたときには、もう6時になっていた。

 

私と先輩は疲れながらも興奮して、すこし柵の外で話してから、家路についた。近所ではあるがもちろん別々の家だ。先輩は私の家に行きたいというそぶりを見せなかったし、私も連れて行きたいというそぶりは見せなかった。その逆も然り。てなわけで、微妙な空気感の中二人は歩道橋の下で別れた。この日のこの気持ちは一体何だったのかわからないけど、帰ってからシャワーを浴びながら、恋のような気持ちを抱いているのが分かった。

 

「のような」だけど…。